昨年(2014年)に、新潟県の三条市が、市内の小中学校の給食から牛乳を廃止しようとしていました。

そして、この6月30日の教育委員会で、夏休み明けの9月の給食から牛乳を廃止することにしました。もっとも、「ご飯に合わない」という理由でしたので、給食ではない時間に牛乳を提供するようですが。

給食と言えば牛乳


さて、多くのみなさんが、「給食と言えば牛乳」という記憶があると思います。そして、主食がパンのときならまだしも、ご飯には合わないという記憶もあるはず。


これまで、給食に牛乳が出されるのは、安価に安定した栄養を摂取することができるという説明が多くされてきたと思います。

三条市でも、これまでの議論の中で、
牛乳はビタミン群も豊富で、1本加えることで食事全体の栄養バランスが良くなる。子供たちの健康のためにも給食で牛乳を出してほしい。献立上難しければ、コメを炊く水を牛乳にしたりミルク豚汁にしたりして料理で使うことも考えてもらいたい。(日本乳業協会の石原哲雄常任理事)

正しい和食の食習慣学んで 新潟・三条市 試験的に学校給食の牛乳中止へ

など、栄養面での議論が多かったようです。

三条市は、米どころということもあって、給食の主食を全てご飯にしているということで、「ご飯と牛乳は合わない」という問題意識で検討が開始され、毎回牛乳に頼らなくても栄養面では問題ないという結論を得たようです。

酪農振興法という法律があります


ところで、酪農振興法ってご存知ですか。正式には、

酪農及び肉用牛生産の振興に関する法律


といって、昭和29年に定められています。

酪農振興法の目的


酪農振興法の目的は、1条に記載されています。

少し長いですが引用してみます。
酪農及び肉用牛生産の近代化を総合的かつ計画的に推進するための措置並びに酪農適地に生乳の濃密生産団地を形成するための集約酪農地域の制度並びにこれらに関連して生乳等の取引の公正、牛乳及び乳製品の消費の増進並びに肉用子牛の価格の安定及び牛肉の流通の合理化を図るための措置を定めて、酪農及び肉用牛生産の健全な発達並びに農業経営の安定を図り、あわせて牛乳、乳製品及び牛肉の安定的な供給に資することを目的とする

要約すると、計画的に牛乳などを生産する態勢を作って、農業経営の安定と牛乳などの安定的な供給を目指す、ということになります。

給食への牛乳の供給


そして、酪農振興法では、牛乳を学校給食に供給することも決められています。

具体的には、

学校給食供給目標(24条の3の2)
学校給食供給計画数量(24条の3の3)
学校給食への供給の円滑化(24条の3の4)


が定められています。

中身はこんな感じです。(適宜端折ってます)
(学校給食供給目標)農林水産大臣は、・・・国内産の牛乳の消費の増進を図ることにより酪農の健全な発達に資するため、国内産の牛乳を小学校及び中学校などにおける学校給食用として広範に供給することを目途として、国内産の牛乳の学校給食への供給に関する目標(以下「学校給食供給目標」という。)を基本方針に即して定め、これを公表しなければならない。

(学校給食供給計画数量)農林水産大臣は、毎年度、学校給食供給目標に即し、かつ、牛乳の需要及び供給の動向並びに学校の幼児、児童及び生徒の数を勘案して、国内産の牛乳の学校給食への供給計画数量(以下「学校給食供給計画数量」という。)を定め、これを公表しなければならない。

(学校給食への供給の円滑化)国は、学校給食供給計画数量に相当する数量の国内産の牛乳の学校給食への供給の円滑化を図るため、国内産の牛乳を学校給食の用に供する事業について援助する等必要な措置を講ずるものとする。

学校給食供給目標


こんな法律があるんだな~と思いながら、一応、法律に決められている「学校給食供給目標」が公表されているか調べてみました。

すると農林水産省のHP(牛乳・乳製品のページ)にきちんと掲載されていました。

学校給食供給目標の公表について(PDF)


内容はと言うと、

年間供給日数:195日


1人1日当たりの供給量:200cc


と定めています。

要するに、給食に小パック1個ってことですね。

子どものことを考えた議論を


ということで、「給食には牛乳」の議論は、単に栄養のことだけではなくて、日本の酪農産業の振興のための政策とも関係しているということが分かりました。

三条市の問題提起は「ご飯に合わない」という、至極簡単なところから始まっていますが、各方面に大きな波紋を呼びそうですね。

ともあれ、給食を食べる子どもたちのことを第一に考えた議論が行われるといいですね。

少なくとも、もう酪農振興法の出番ではないでしょうよ。